
SEC、バイナンスに対する訴訟を取り下げ——仮想通貨、コンプライアンス、プロップ取引への影響
2025年5月30日、米証券取引委員会(SEC)は、世界最大級の仮想通貨取引所バイナンス(およびその創業者であるチャンポン・ジャオ=CZ)に対する民事訴訟を正式に取り下げました。この訴訟は約2年にわたって続いてきましたが、内容の審理に入ることなく終結しました。
SECは、「この取り下げが他の案件に対する立場を示すものではない」と強調していますが、この撤退はすでに業界内で多くの議論を呼んでいます。そして、その影響は仮想通貨の枠を超え、プロップ取引業界にも波及しています。
何が起きたのか?
SECは2023年6月、バイナンスとCZに対して13件の違反を訴えていました。その中には、米国の顧客が国際版バイナンスを利用できるようにしていたことや、バイナンスUSが完全に独立していると虚偽の説明をしていたことなどが含まれていました。
しかし今回、訴訟は「却下と同時に再訴訟不可(with prejudice)」という形で終了。これは、SECが同じ内容で再び訴訟を起こせないことを意味し、極めて異例の対応です。
プロップ取引業界にとっての重要ポイント
プロップファーム、特に仮想通貨関連のチャレンジやオフショア流動性プロバイダーと提携している企業は、この展開を慎重に見守る必要があります。以下の理由から、この訴訟取り下げは無関係ではありません:
- 仮想通貨は依然として「グレーゾーン」
- SECの後退は、規制当局内の優先順位の変化や、海外企業への強制執行の難しさを示している可能性があります。
- オフショア構造は引き続きリスク対象
- バイナンスの構造は、いくつかのハイブリッド型プロップファームが用いているものと類似しており、将来的な法的リスクを再確認する必要があります。
- コンプライアンスは今や「必須」
- 訴訟が成立しなくても、SECは透明性、内部統制、ディスクロージャーを重視しているという明確なメッセージを送っています。米国顧客に関わる全ての事業体は監視対象です。
- 仮想通貨とプロップ取引は融合しつつある
- より多くのプロップファームが仮想通貨商品を提供する中、規制の理解は成功の鍵となります。訴訟の取り下げは「リスクが消えた」という意味ではなく、「リスクに備えよ」という警鐘です。
今後の展開
この訴訟の終結は、規制の終了を意味するものではありません。SECやCFTC、その他の世界的な規制当局は引き続き仮想通貨プラットフォームを厳しく監視しており、法的枠組みは未だ進化の途中です。
しかし、今回の撤退は将来の法的アプローチに影響を与える可能性があり、伝統的金融とデジタル資産の狭間に位置するプロップファームにとっては、今こそ「先手の対応」が求められます。
結論
SECがバイナンス訴訟を取り下げたことは、表面的には勝利のように見えるかもしれませんが、実際には取引業界におけるコンプライアンスの重要性を改めて浮き彫りにしました。プロップファームは、仮想通貨商品を提供する場合、自社の構造と規制対応の堅牢性を見直す必要があります。
PropInsiderでは、引き続き仮想通貨とプロップ取引の交差点で起きる重要な動きを追跡していきます。